1956年と言う年が、ウェスト・コースト・ジャズにとって、最初の大きな
転換点であった事は、シュリー・マンの『スィンギング・サウンズ』の項でも
述べたが、他のウェスト派の白人たちの黒人バップ志向作品が、黒人への
擦り寄り、阿りを思わせる未熟さが鼻に付くが、このチェット・ベイカー&
アート・ペッパーの作品は実にしっくりなじむ完成度の高さを示した傑作と言える。
一般にウェスト・コーストは編曲主義、ハードバップはアドリブ主義、
と解釈されているが、東海岸黒人ハードバッパーのジミー・ヒースが大部分の
作編曲を担当した本アルバムは、その定説に疑問を投げかける1枚でもある。
編曲がハードバップの活力を削ぐ、と言う考えが短絡的であることは、本アルバム以外に
タッド・ダメロンやベニー・ゴルソンの純正ハードバップを聴いても明らかであろう。
ところで、このバンドはジツにまとまったパフォーマンスの高さを示しているので、さぞかし、息の
合ったメンバーかと思いきや、さにあらず、マラブルらのリズム隊は、白人にジャズなどできるものか
とアート・ペッパーの事を軽蔑していた事が彼の自伝に書かれていて、これには驚かされた。
パウエル&ナヴァロやマイルス&モンクに並ぶ名演カッティング・セッションとして
数えても良いかもしれない。
Playboys/チェット・ベイカー&アート・ペッパー
Playboys/チェット・ベイカー&アート・ペッパー に加筆・修正を加え転載。
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